2024年の診療報酬改定では、在宅時医学総合管理料の引き下げをはじめとした、在宅医療における診療報酬が見直されました。一方で「質の高い在宅医療の確保」を目的として、新設された項目もあります。
本記事では、以下5つのDXやICTに関連する在宅医療の新設項目について解説します。
新たな診療報酬の内容を理解して算定し、患者さんに質の高い在宅医療を提供しましょう。
(※2024年8月時点の情報にて作成)
医療DX推進体制整備加算とは、医療DXを推進するために一定の要件を満たす医療機関が算定できる加算です。以下の体制を評価する目的として新設されました。
医療DX推進体制整備加算 | 8点(月に1回) |
医療DX推進体制整備加算は、施設基準を満たす医療機関を受診した患者さんに対して初診を行った場合、月に1回に限り初診料に加算できます。
医療DX推進体制整備加算を算定するためには、以下の施設基準に適合しているものとして、地方厚生局長等への届出が必要です。
医療DX推進体制整備加算はレセプトのオンライン請求が要件です。光ディスクや書面による請求をしている場合は算定できません。また、オンライン資格確認ができる体制も必須ですが、情報を取得するだけでなく、取得した情報を診療に活用することが求められています。
電子処方箋の発行や電子カルテ情報共有サービスの体制についても書かれていますが、経過措置期間内は要件を満たしているとして算定が可能です。厚生労働省は、届出時点で導入予定が具体的に決まっていなくても、経過措置期間は算定可能としています。
電子カルテ情報共有サービス導入などの具体については、サービスが実装可能になったタイミングで改めて疑義解釈が示される予定です。
医療DX推進体制整備加算は令和6年10月より算定点数と算定要件が変更され、これまで一律8点だった加算が以下の3段階に見直されます。
施設基準として、医療DX推進体制整備加算1と医療DX推進体制整備加算2では、「マイナポータルの医療情報等にもとづき、患者からの健康管理に係る相談に応じること」という項目が追加されています。
加えて、これまで「一定の実績」とされていたマイナ保険証の利用について、利用率にもとづいた基準が設定されました。医療DX推進体制整備加算を算定するためには、下図のマイナ保険証利用率を満たす必要があります。
出典:医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算の見直しについて 厚生労働省保険局医療課 令和6年3月5日版
医科診療所におけるマイナ保険証の利用状況は、令和6年6月時点で8.24%です。令和7年1月からはさらに利用率の要件が厳しくなるため、加算を取得するためには声かけなどによる利用促進が必要となるでしょう。
在宅医療DX情報活用加算は、モバイル端末などの「居宅同意取得型のオンライン資格確認等システム」を使用して、患者宅でオンライン資格確認をすると在宅患者訪問診療料に加算できます。オンライン資格確認で取得した診療情報や薬剤情報を、在宅医療における診療計画の作成に活用し、質の高い在宅医療の提供を目的として新設されました。
在宅医療DX情報活用加算 | 10点(月に1回) |
在宅医療DX情報加算は、以下の診療料を算定する患者さんに対して、月に1回を限度に算定できます。
初回訪問の場合は、あらかじめオンライン資格確認で取得した診療情報を活用して、訪問診療の計画を作成していなければ算定できません。事前に診療情報を取得しており、初回訪問時に患者さんの診療情報を活用可能な場合は算定可能です。
また、以下の加算を同月に算定している場合は、在宅医療DX情報加算は算定できません。
加えて、在宅がん医療総合診療料に対して在宅医療DX情報活用加算を算定している場合は、同月に在宅患者訪問診療料に対する在宅医療DX情報活用加算は算定できません。
医療DX推進体制整備加算を算定するためには、以下の施設基準に適合しているものとして、地方厚生局長等への届出が必要です。
医療DX推進体制加算と同様に、在宅医療情報DX情報加算でもレセプトのオンライン請求やオンライン資格確認を行う体制が求められます。電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスの取り扱いについても同様に、経過措置期間内は基準を満たしているとして算定可能です。
在宅医療情報連携加算は、他の医療機関や介護施設などの関係職種がICTを用いて記録した患者さんの診療情報を活用して、医師が計画的に医学管理を行った場合、以下の項目に加算できます。
在宅医療情報連携加算 | 100点(月に1回) |
電話やFAXではなく、アプリやシステムを活用して「患者さんの治療やケアの内容・状態」を共有することで、迅速な対応や治療、相談につなげることが目的です。ICTを用いた情報共有の事例を、中央社会保険医療協議会は以下のように示しています。
在宅医療情報連携加算を算定するためには、医療関係職種等がICTを用いて記録した「患者の医療・ケアに関わる情報」を取得したり活用したりしたうえで、医師が計画的な医学管理を行うことが必要です。医療関係職種等とは、次のような職種を指します。
また、「医師による診療時の診療情報を記録し、医療関係職種等に共有すること」について、患者さんから同意を得ていることも要件のひとつです。加算を算定するためには、具体的に以下の内容を記録する必要があります。
医療関係職種がこれらの情報を取得した場合は、医師と同様に記録が必要です。また、訪問診療を行う場合に、ICTを用いて「患者さんの過去90日以内に記録された医療・ケアに関する情報」を取得した数が1つ以上なければなりません。
医療関係職種等から患者さんの医療やケアをするにあたって助言を求められたら、適切に対応することも必須となります。
医療DX推進体制整備加算を算定するためには、以下の施設基準に適合しているものとして、地方厚生局長等への届出が必要です。
在宅がん患者緊急時医療情報連携指導料は、在宅で療養している末期の悪性腫瘍患者さんの病状急変時に、ICTを活用して医療従事者や介護職などの間で共有されている「人生の最終段階における医療・ケアに関する情報」を踏まえ、医師が療養上必要な指導を行った場合に算定できます。末期の悪性腫瘍患者さんや家族が、安心して療養生活を送れるようにすることが目的です。
在宅がん患者緊急時医療情報連携指導料 | 200点(月に1回) |
在宅がん患者緊急時医療情報連携指導料の算定に該当する指導を行ったものの、患者さんが入院となった場合も算定できます。また、在宅療養支援診療所(以下、在支診)・在宅療養支援病院(以下、在支病)以外の医療機関も算定可能です。
なお、「人生の最終段階における医療・ケア」の方針は、下図のように決定するとされています。
在宅がん患者緊急時医療情報連携指導料の算定対象は、過去30日以内に「在宅医療情報連携加算」を算定している末期の悪性腫瘍患者さんです。そのうえで、以下の2点を満たしている場合に算定できます。
加えて、カルテには次の内容を記載する必要があります。
在宅がん患者緊急時医療情報連携指導料を算定するためには、通常時から患者さんに関わる事業所がICTを活用して記録をし、医師が常に確認できる体制の構築が必須です。なお、ICTを用いて連携機関と患者さんの個人情報を共有する場合は、厚生労働省の定める「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に則ってください。
往診時医療情報連携加算は、通常は在支診・在支病以外の保険医療機関が訪問診療を行っている患者さんに対して、連携している在支診・在支病が往診を行った場合、往診料に加算できます。地域における24時間の在宅医療提供体制構築の推進を目的として、新設されました。
往診時医療情報連携加算 | 200点 |
往診時医療情報連携加算を算定する在支診・在支病は、連携している保険医療機関(在支診・在支病以外)と月1回程度の定期的なカンファレンスや、ICTを活用して患者さんの診療情報や病状急変時の対応方針を共有していることが要件です。
そのうえで、連携保険医療機関(在支診・在支病以外)が往診できない時間帯に、在支診・在支病が共有された患者情報を参考に往診を行った場合に算定できます。加算算定時には、カルテに以下の記載が必要です。
往診時医療情報連携加算の算定対象となるのは、連携保険医療機関(在支診・在支病以外)から対応を行う予定の在支診・在支病の名称、電話番号、担当者の氏名などを提供されている患者さんのみです。
近年は自宅で亡くなる患者さんの割合が増加しており、在宅医療の需要は今後も高まるとされています。質の高い在宅医療を提供するためには、DX化やICTを活用した情報連携が欠かせません。
これらを積極的に取り入れることで、患者さんに質の高い在宅医療を提供できるだけでなく、クリニックの増収にもつながります。
患者さんのためにも、クリニックのより良い経営のためにも、算定要件や施設基準を理解し、正しく算定しましょう。
患者さんにより良い医療を提供するためにも、在宅レセプトに詳しい医療事務の採用は欠かせません。
とはいえ、在宅レセプトは、外来レセプトと比較して難易度が高いため、就業のハードルも高くなりがちです。なかなか在宅医療の経験が豊富な医療事務が見つからない場合も多いでしょう。
そんなときは、レセプト代行サービスを活用するという方法があります。特に、訪問診療クリニックであれば在宅医療に特化したレセプト代行サービス「レセサポ」がおすすめです。
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