「開院したけど指導や監査の対策は何からすればいいのか」
「他の医療機関はどのように指導や監査対策をしているんだろう」
医療機関における指導や監査は年々厳しくなっています。対策が不十分であると診療報酬の返還や保険医療機関の指定取消につながる可能性があり、クリニックの運営において非常に重要です。
今回は、指導や監査で指摘されやすいポイントやその対策について、大手医療法人の事務長にお話を伺いました。これまで多くの診療所やクリニックの指導や監査対策を担ってきた経験をもとに具体的な対応策もお話しいただきました。
■令和4年度における指導・監査の実施件数 | |
個別指導 | 1,505件 |
新規個別指導 | 6,742件 |
適時調査 | 2,303件 |
監査 | 52件 |
■令和4年度における取消等の件数 | |
保険医療機関 | 18件 |
保険医 | 14件 |
(厚生労働省|令和4年度における保険医療機関等の指導・監査等の実施状況についてをもとに作成)
個別指導においては年間1000〜2000件実施されており、令和4年度の返還金額は約19億円、保険医療機関の指定取消は18件です。
診療所やクリニックの経営において、指導・監査の対策は非常に重要であることがわかります。
指導や監査には、「集団的個別指導」「個別指導」「新規個別指導」「監査」があります。
種類 | |
集団的個別指導 | レセプト1枚あたりの平均点数が高い保険医療機関を一定の場所に集めて講義形式で行う指導。管理者の出席は必須。拒否すると個別指導の対象となる。 |
個別指導 | レセプト1枚あたりの平均点数が高いこと、不正請求の疑いがあり厚生局が必要としたことなどの条件で個別の面接懇談方式で行う指導。 |
新規個別指導 | 新規指定のすべての保険医療機関を対象に個別の面接懇談方式で行う指導。開院して1年以内に行われるのが一般的。レセプト10人分が確認される。 |
監査 | 保険医療機関の診療内容や請求について不正が疑われるとき、個別指導にて要監査とされたときに実施される。レセプトの書面調査や患者等に対する実地調査が行われる。 |
表)指導や監査のちがい
(厚生労働省|指導大綱、監査要綱およびインタビューをもとに作成)
訪問診療クリニックは、「個別指導」への対策を意識すると良いでしょう。
というのも、個別指導は主にレセプト1枚あたりの平均点数が高い医療機関が対象となります。訪問診療を主体に運営していると平均点数を超えてくる傾向にあるため、個別指導の対象医療機関に選定されやすくなります。診療科別平均点数は各地方厚生局が公開しているため、当院でも必ずチェックしていますね。
参考)関東信越厚生局|管内各都県の保険医療機関等の診療科別平均点数について
個別指導に選定されると、まず厚生局からおよそ1ヵ月前に郵便で通知が届きます。その後、実施日の1週間前にカルテやレセプトなどを確認する対象患者20人分のリストがFAXで届きます。実施前日には、さらに10人分のリストがFAXで届きます。事前に準備したり、提出したりする書類は膨大なため計画的な準備が必要です。
個別指導での主な指摘事項は全国の地方厚生局で公表されています。
北海道や関東信越、近畿など各厚生局ごとにホームページが設けられており、それぞれで指摘事項が公表されています。
特に「管理料」の名が付くものに関して、どのように管理しているのかがカルテに記載がないと「管理されていない」と解釈されます。在宅医療部門には管理料の項目が多くあるため根拠や指示、指導内容の要点がカルテに記載されているかはよく指摘されるところです。
「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則(療担規則)」では、保険医がレセプト請求の内容を確認することが求められています。
“第二十三条の二 保険医は、その行つた診療に関する情報の提供等について、保険医療機関が行う療養の給付に関する費用の請求が適正なものとなるよう努めなければならない。”
引用)厚生労働省|保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則
とはいえ、レセプトチェックの業務は医療事務が主体的におこなっている医療機関が多いと思いますので、医療事務も診療録の記載内容をチェックできる体制を整えておくことが必要ですね。そのために、診療報酬の改定などに合わせて知識をアップデートする機会を設けるなど、診療所やクリニック全体で取り組めると良いと思います。
指導や監査の対策としては日頃より意識してチェック体制を整えることが重要ですね。
特に返戻や査定でレセプトが戻ってきた時が意識する一つのタイミングです。また各地方厚生局で毎年公開している不正請求や不当請求の事例は必ず確認して、自分たちも同様の事例がないかチェックしています。
あとは診療報酬改定の時期も施設基準や算定要件が新たに通知されますので、改めて見直すタイミングになります。
他に、指導や監査対策としては、実際に指導や監査の通知が届いたとき、責任者や担当者などの役割分担を決めるのも良いでしょう。
事前に準備する書類や手続きが多いため、医師だけで実施できることではありません。職種にかかわらず、どのように準備を進めていくかのシミュレーションをしたり、各手続きの担当者などを決めたりと役割をあらかじめ決めておくのは大事です。
やはり初めての指導や監査は、どこの診療所やクリニックでも不安があると思います。
まずは保険診療における基本的な対策を知るために以下の資料の内容を理解する必要があります。
厚生労働省|保険診療の理解のために
「保険診療の理解のために」は保険診療における「教科書」です。毎年厚生労働省が更新している資料で、読まずして指導や監査の対策はできません。
もう一つは、各地方厚生局が公開している個別指導や適時調査における主な指摘事項です。
自身の診療所やクリニックの管轄地域の厚生局が公開している指摘事項を最低限確認しておくと、どういうところに気を付けなければならないかが把握できます。また他の地域の厚生局が指導している内容も確認しておくことで、対策できる可能性が高いので参考にしています。
参考)関東信越厚生局|個別指導及び適時調査において保険医療機関等に改善を求めた主な指摘事項について
近隣にすでに個別指導を受けた医療機関があれば、「どのような流れで行われたのか」「どのような雰囲気だったか」など情報収集できると良いかもしれません。初めての個別指導などは不安があると思いますので、実際の体験談を開くことで少しでも不安が解消できるのではないかと思います。
実際に通知が届いてから対策するのは限界がありますので、日頃から指導や監査を意識して対策を講じていくことが非常に大切だと個別指導を受けるたびに思いますね。
日頃から指導・監査に向けた準備が整った状態にしておくためにも、在宅レセプトに詳しい医療事務の採用は欠かせません。
とはいえ、在宅レセプトは、外来レセプトと比較して難易度が高いため、就業のハードルも高くなりがちです。なかなか在宅医療の経験が豊富な医療事務が見つからない場合も多いでしょう。
そんなときは、レセプト代行サービスを活用するという方法があります。特に、訪問診療クリニックであれば在宅医療に特化したレセプト代行サービス「レセサポ」がおすすめです。
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