開業医1年目のための在宅レセプト解説 VOL.1 在宅レセプトの基本

開業医1年目のための在宅レセプト解説 VOL.1 在宅レセプトの基本

医師であれば誰でも耳にしたことがある「レセプト」。
身近な用語でありながら、医学部時代も医局時代も実務に触れる機会がほとんどないため、実際にどんな業務を行っているのかを説明できる人は少ないのではないでしょうか。
医事課さんのお仕事、として認識している人も多いかもしれませんが、実はレセプト業務はすべての医師、特にクリニック経営者が知っておくべき内容なのです。
シリーズ第1回では、なぜ医師がレセプトについて理解しておかなければならないのか、基本を押さえながら学んでいきましょう。

レセプトとは

まずはレセプトの基本をおさらい

レセプト(診療報酬明細書)とは、医療機関が保険者に医療費を請求するために、保険医療を行った際のすべての診療行為とそれに掛かった費用の内訳を記入した明細書のことです。
現在の日本の保険診療において、患者は保険医療サービスを受けた際に医療機関の窓口で一部負担金を支払うこととなっており、医療機関はその負担金を除いた残りの金額を審査支払機関に請求することで支払いを受けることができます。
レセプトの作成だけではなく、請求をして実際に支払いを受けることでレセプト業務が完結します。

レセプト内容の責任は医師にあり

「レセプトって医療事務さんのお仕事じゃないの?」と思っていませんか?
厚生労働省が医療機関への集団指導用資料として公開している「保険診療の理解のために:医科(令和5年度版」)において、以下のように記載されています。

「診療報酬明細書(レセプト)は、請求事務部門が単独で作成するものではなく、保険医もまた作成の一翼を担っていることを十分に認識する必要がある。」
(参照:
https://www.mhlw.go.jp/content/001113678.pdf

また、健康保険法に基づき定められている保険医療機関及び保険医療養担当規則第23条の2には、

「保険医は、その行った診療に関する情報の提供等について、保険医療機関が行う療養の給付に関する費用の請求が適正なものとなるよう努めなければならない。 」

との記載があります。
(参照:
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=332M50000100015

レセプト作成は医療事務だけではなく医師の業務でもあり、その内容が適切であるか否かについても医師が確認する必要がある、ということです。

レセプト作成業務自体は医事課が担当しているとしても、医師以外はカルテに傷病名を記載することができません。審査はレセプトに記載されている内容に基づき行われ、その結果によって点数・支払金額が決定します。つまり、疾病名を記載する医師が審査支払機関に提出するレセプトの記載内容に関する責任を負っているということです。

まずはレセプト内容の責任の所在が医師にある、という認識を常に持つようにしましょう。

クリニックの売上に直結

前述の通り、診療報酬はレセプトの内容に基づいた審査を経て決定します。
ではもしその記載内容に誤りがあった場合、クリニックの経営にどのように影響するのでしょうか。

患者が支払う一部負担金は外来であれば診察の都度、訪問診療では1ヶ月毎に支払われます>が、残りの部分の支払いが完了するのは約2ヵ月後です。そのため特にクリニックの開業時など、レセプト業務のサイクルが回り始めるまではすぐに現金が手に入らないことがあります。診療報酬請求のサイクルを把握できていないと、手元にある現金の流れも把握できなくなる可能性があり、資金の予測を立てることが難しくなってしまいます。

請求を行っても、レセプト内容の不備などによりレセプトの返戻や減点が行われ、サイクル通りに診療報酬の支払いを受けることができないことも多くあります。返戻されたものについては再請求が可能ですが、診療内容の精査や確認が遅れた場合、翌月の請求スケジュールへ回すことになり、支払いも1ヵ月遅れることになります。このような状態が続くと診療報酬の入金が延びていくことにつながり、必要なときに必要な資金が手元にない、ということが発生する可能性が出てきます。
このような事態を避けるためには、レセプト作成の段階で正確な情報を記載することが重要です。作成時にどのような点に気を付ければ良いのか、次のチャプターで作成の流れを確認しながら見ていきましょう。

返戻や減点については第2回で詳しく解説します。

レセプトができるまで

カルテ入力・内容確認

カルテは、訪問診療や往診の際に行った医療行為の内容を証明するものですが、診療報酬請求を行うための原本となるものでもあります。

レセプトときくと「分かりにくい」「大変そう」というイメージを抱きがちですが、そもそもは日々のカルテ記載から出来上がるものだということですね。つまり日頃からカルテ記載を確実に行っていれば、正しい診療報酬算定のレセプトが作成できるということでもあります。

カルテ記載は診療記録だけではなくレセプトにも関わるものであることを念頭に置き、常に正確な内容を記載するように心がけましょう。

診療行為入力

医師は行った診療行為や指導内容を電子カルテに入力します。
その後、その診療内容に沿った診療報酬を電子カルテに入力することで医療費が自動的に反映されます。

レセプトの作成

カルテ記載に伴う診療報酬の入力により、電子カルテが自動的に診療報酬を計算して患者ごとの電子レセプトを作成してくれます。

そのため、患者数の多いクリニックであっても、それほどの手間をかけずにレセプトを作成することができます。

レセプトの点検・確認

クリニックの収益に影響する、一連のレセプト業務のなかで最も重要な作業です。
注意して見るべきポイントの一例を以下に挙げています。

  • カルテに記載した傷病名と一致しているか
  • 疑い病名等が長期間にわたり放置されていないか
  • 診療開始日がレセプトとカルテとで一致しているか
  • レセプトの請求内容がカルテの診療内容と一致しているか 
  • 医師が実施していない医学管理料等が算定されていないか
  • 中止、取消した薬剤等が誤って算定されていないか
  • 処置名は実際に行った診療内容と合致しているか

医師による確認

レセプト中に傷病名、診療行為、処方薬などに整合性が取れない記載が見つかった場合は、速やかに修正対応を行います。
ここでの確認が不十分であると不備のあるレセプトを提出することとなり、レセプトの再提出や診療報酬の減点につながってしまいます。
スタッフの負担増やクリニックの収益減の要因にもなりますので、提出前の最終確認はしっかりと行うようにしましょう。

レセプトの提出

以上のステップを経て完成したレセプトを審査支払機関に提出します(オンライン請求)。このあとレセプトの内容に基づいて審査が行われ、診療報酬の金額が決定します。

まとめ

よく聞く言葉でありながら詳しく知る機会のなかったレセプトの業務について、基本を押さえることができたでしょうか?
医事課が担当していることが多いため実務に触れることがあまりない業務ですが、本来は医師が関与し責任を負うものであるということが分かりました。
次回は、提出したレセプトがどのように審査され診療報酬としてクリニックが受け取れるようになるのか、一連の流れとともに詳しく解説していきます。

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